ロータリーの友 2017年7月号
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THE ROTARY-NO-TOMO2017 VOL.65 NO.7筋電義手の可能性日本医科大学形成外科准教授小野 真平 義手は、手のようなものをキャップをかぶせるように着けるもので、装飾義手と筋電義手があります。装飾義手は動かすことはできませんが、筋電義手は、手を動かそうとする神経電流をセンサーが感知し、動かすことができます。当然、動く筋電義手の方がいいのですが、重かったり、高額だったりといろいろな問題があります。 義手の中で、筋電義手が占める割合は、ドイツでは七〇㌫、アメリカ二五~四〇㌫、イタリア一六㌫、日本は技術が発達しているにもかかわらず、普及率は二㌫です。 見た目がよくない、保険などのカバーが不十分、メンテナンスが難しいなど、現在の筋電義手は、患者が望むものと大きなギャップがあります。筋電義手工学の世界は、大学が関わるベンチャー企業が次々に立ち上げられ、群雄割拠ですが、どこも医者による臨床的な関与が不足しているため、患者が求めている義手と若干差があります。 近年、筋電義手はかなり軽量化されてきており、シリコン製など見た目もきれいに7419なっています。さらに、人工知能(AI)を備えた筋電義手が開発されています。これは、義手の動きが間違っている場合、AIがセンサーに教え、それを繰り返すことでAIが学習し、その人の癖に合った筋電義手を作ることができるというものです。医療センターの整形外科や子ども病院などでは、お菓子などを使った筋電義手のトレーニングが始まっています。 日本の装飾義手の技術は進んでおり、おそらく世界一です。見た目には義手と分からないものが開発されています。よく見るとつなぎ目がありますが、指輪で隠すなどでカバーできます。日本の装飾義手の技術があれば、義手を着けていても気付かれない生活をすることができます。 筋電義手の開発者の中には、筋電義手を健常な人の手に近づけるだけでなく、人ができないようなことを、筋電義手を使ってやりたいと考えている人たちがいます。強い力を出せる義手や、火の中に手を入れて作業ができる義手などです。 これからは、患者とのつなぎ役を医者がやらなくてはなりません。工学の研究者と医者と患者とが連携して、新しい選択肢を提案できることが望ましいです。  (第二八四〇地区・群馬県・桐生中央RCにて) 当たり前のことですが、親は子どもより先に死にます。普通に暮らしていると気づきにくいことです。しかし、乳がんを患った千恵さんに残された時間はいくばくもありません。一人でも生きていけるようにと願って、千恵さんが五歳のはなちゃんと交わした約束は「毎朝、自分でみそ汁を作ること」。 千恵さんは三三歳という若さでこの世を去りました。はなちゃんが小学四年生の時に書いた作文です。「わたしは毎日、みそ汁とご飯を食べているので風邪をひかないし、重い病気にもなりません。ママ、わたしを産んでくれてありがとう。自分のいのちは自分で守る。それがママとの約束です」 生きるためにはきちんと食べなければなりません。「食べることは生きること」です。        (第二六七〇地区 香川県)丸亀RC 横田 龍男はなちゃんのみそ汁安武信吾、千恵、はな 著文藝春秋(文春文庫)2014年8月刊●人生を変えた一冊、思い入れの深い一冊、最近読んで感動した本を紹介。詳細は投稿規定または『友』ウェブサイトで!

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