ロータリーの友 2017年7月号
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THE ROTARY-NO-TOMO2017 VOL.65 NO.71776 二〇一七年四月、日本の新聞やテレビ、ラジオなどで大きく報道されましたが、台湾・台南市の烏山頭ダムの湖畔に立つ、八田與一氏の銅像が破壊された事件が起きました。 私たちの祖先の一人が台湾、特に台南の人々と大きな友好の礎を築いた事業、大変な労苦の末に完成させた大事業の成果を冒ぼうとく涜するものであり、台南中区RCとの姉妹関係を三〇年にわたり保持してきた、私たちのクラブにとっても、大変な衝撃を受けた事件でした。 八田氏は大正時代、広大な不毛の荒れ野だった嘉南平野を、緑豊かな農地とした人です。台湾の経済を一気に豊かなものとし、台湾の人々にとっては大恩人でしょう。私たちが台南を訪問するたびにここに案内され、「八田さん」のお話を聞かされたものです。 この事件は台南市のロータリアンにとっても、台南市民にとっても、大変残念な事件であったと思われます。願わくは、一日も早く銅像が復旧されることを希望するとともに、今までと変わらず台湾の方々、台南市民の人たちと日本との友好の絆が、永久に続くこと を願ってやみません。(第二六四〇地区 大阪府 建築材料)台湾・台南で八田與一像破壊  堺おおいずみ堂之本雄治八田 與一(一八八六~一九四二) 戦前の台湾で活躍した日本の水利技術者。台湾南部で、烏山頭ダムと灌漑用水路の建設に貢献しました。ダムの傍らには銅像も立てられています。 命日の五月八日には例年、慰霊祭も行われていましたが、二〇一七年四月一六日朝、銅像の首から上が切断される事件が発生。台南市政府は命日までの像の修復を急ぎ、五月七日、新しい像の除幕式が行われ、あらためて日台両国の友好を確認し合いました。 八田與一に関しては本誌三月号本欄P一六~一七も参照。Annotation三泊四日で、台湾へ近現代の文化遺産をテーマに、歴史探訪の旅をしてきました。 この仲間で台湾を訪れるのも今回で四回目。毎回、テーマを立て各地を巡りました。日本と台湾の間には、不幸な戦争の歴史を刻みますが、その中でも、人と人の交流には心通うものがあったように思います。 旅をして現地を歩くと、今まで知らなかったことがよく分かります。特に今回は、ガイドや同行者の解説が詳しく、充実した旅路をたどることができました。 台南市では、特に八*はったよいち田與一氏の銅像に感銘を受けました。八田氏は、戦前の台湾総督府内務局土木課に技手として就職後、上下水道の整備に当たり、後に発電・灌かんがい漑事業も担当しました。歴史探訪の旅は、四回目。毎回新発見があります。筆者は右から3人目。烏うさんとう山頭ダムの工事は有名で、八田氏の命日・五月八日にはその銅像の傍らで、慰霊祭も行われ続けているそうです。ここでは現地の皆さんと意見交換もできました。眼下に広がる、ダムにより豊かな沃野となった大地を眺め、感慨に浸りました。 学徒として戦争を経験した、懐かしい同士も九二~九四歳となりました。何人かは健在ですが、足元が弱ってきた人が多く、今回は三人が参加となりました。「貴様は元気か」「おれもまだ元気だが」の会話をしながらの旅でした。それでも旅の途中ではジープに乗って移動をするなど、まだまだ意気盛んといったところです。鍛えられた年数を経て、懐かしい同士の絆を、さらに深める旅ともなりました。 こんな私は現在、九三歳を迎えることになり、クラブでは名誉会員になっています。折々、例会には顔を出し、故郷・鎌倉での日々を過ごしています。(第二七八〇地区 神奈川県 名誉会員)

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