ロータリーの友 2017年7月号
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平成29年 7月号ロータリーの友876SPEECH減塩と健康寿命料理とは「ことわり」を「はかる」ことす。食事は野菜と果物を多く取ると、カリウムが取れます。カリウムは体内塩分の排出を促します。同時に脂肪の摂取を制限します。これに過度な運動習慣を付け、飲酒は適度(日本酒で一合、ビールなら大瓶一本ぐらいまで)に、という日常の習慣を身に付けていただきたいと思います。 日本人はまだ、塩分摂取過剰の文化にあります。世界標準が一日あたり五㌘未満なのに対し、現在の日本人は平均一〇㌘もあります。ちなみに日本人の目標は、男性で八㌘未満、女性で七㌘未満という数値が出ています。皆さんにこのような話をすることもあり、わが家の塩分摂取量を計ったところ、一日平均六㌘と出ました。 私の例を引き出しますが、結婚して三九年です。新しい家庭での夫婦の好みは異なるもので、結婚直後に「ちょっと申し訳ないが味噌汁が薄い。こんなの、僕は飲めない」と言いました。しかし妻は「いえ、これからはこの味にしてもらいます」。三九年間、その味で過ごしましたらどうでしょう、習慣となると人は慣れるのです。子どもたちは、生まれたときからその味が基本となるわけです。 これが「習慣」の大切さです。習慣は変えられます。まず気付くこと、そしてそれに対してどのようにアクセスしたらいいのかを考える。それから、あれこれ試しながら習慣にする。一つの家の食生活の文化まで、変えることができます。 では、次に「塩分と私」。まず、自分はどのように塩分と付き合っているのか。そして自分のポピュレーションアプローチで地域に減塩活動を広めるとっておきの塩分の控え方、を考えてみてください。「味が薄いな、と感じたときに塩を振りかけず、付けて食べるようにする」「料理をする時、普段から塩を振る回数を少なくすることを意識している」こんな感じでしょうか。 個人で行える減塩法を、項目で列挙してみましょう。漬物は少なめにする/麺類の汁は残す/保存食品より新鮮な食材を選ぶ/味噌汁は具だくさんに/調味料は少なめに/香辛料や酸味を使う/外食機会を減らす/野菜を大目に、となります。急にすべてを変えようとすると無理がかかりますから、これらの項目を徐々に習慣化することを図り、舌をならすこと、習慣にすることがコツです。 料理という言葉は、理「ことわり」を料「はかる」と書きます。ことわりとは、理由とか理屈のこと。コメは炊いて食べますよね。コメというものは炊いて食べるとおいしい、という先祖からの伝言です。では、リゾットは? こちらはコメを炒めて調理します。それぞれ、味を引き立たせる調理法として「理屈」があります。理屈を立てるためには、コメと水のことわりをはかることになります。これが料理です。先人から受け継いだ知恵、工夫が料理の中に存在しています。 減塩について、昔はこんなに言われませんでした。しかし今もう一度、料理の意味を考え直すこと、塩の「ことわり」を「はかる」時代になっているのではないかと思います。そこに新しい食文化が生まれてくるのではないか。日本の伝統の良さ、味を守りながら減塩も行う、という知恵や工夫を凝らしていかなければと思います。 食品成分表示表をご覧になられたことがありますか。塩分を見ると「何㌘」と出ています。ここで注意が必要なのは「ナトリウム」という表記。食塩の化学式はNaCl、塩化ナトリウムで、そのナトリウムの量だけを書いたものがあります。今はまだ試行中ですが、二〇二〇年までには、食品表示記載のうち、塩分相当量を書くことになります。現在は「ナトリウム」と書いてあったら、その数値を二・五倍すれば食塩相当量が出ます。「ナトリウム」の記載数値イコール塩分量、ではありません。このまま誤解してはなりません。 例えば食パン。同じ食パン一枚でも、食塩相当量は薄切りだと〇・七㌘、厚切りだと大体一・二~三㌘になります。品物を手に取った時、塩分を見る習慣を付けてください。食事も塩分を意識してください。お聞きになったことがあると思いますが、ラーメンの汁を飲めば六・六㌘の塩分を取ることになり、一日の塩分摂取量はこれで終わりです。 調味料にも気を付けてください。わが家では料理酒は使わず、お酒そのものを使います。料理酒には塩分が添加されているからです。 さて三番目、「塩分と私たち」。なぜ「たち」なのか。これは、塩分と付き合っていくには自分一人だけではだめだ、ということを意味しています。「お父さんは高血圧だから、お父さんだけ高血圧の人の食事」ではなく、家族全員同じ食事にするのです。「私たち」で取り組む必要があります。それをさらに、地域に広げてみたらどうか、という話をしたいと思います。 もう気が付かれている方もおられると思います

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