ロータリーの友 2017年7月号
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平成29年 7月号ロータリーの友SPEECH894生まれたての地球の海水と私たちの血液の塩分濃度は同じ2016年10月2日 国際ロータリー第2630地区下呂RC地域活性化事業 減塩食普及講演要旨私たちは塩分を取らずには生きていかれません。とはいえ取り過ぎは悪循環の始まり。そこで、減塩を通して皆が健康で過ごしていこう、地域社会を良くしていこう、お互いがお互いを大切にしていこう、というムーブメントはすでにおこっています。これこそが、街づくりそのものへもつながっていくのではないか、と私は思っています。Eiji Kajii梶井 英治  自治医科大学名誉教授減塩と健康寿命 健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことを指します。現在、健康寿命と平均寿命との差は、男性は九歳、女性は一二歳。この差が、介護が必要となる期間と理解していただければと思います。 では、介護が必要となってしまう要因とは何でしょうか。全体的な老衰も出てきますが、関節の障害、骨折、筋力の低下などがまず挙げられます。いわゆる整形外科の領域のイメージでしょうか。この分野が介護の約一七㌫を占めています。次に認知症。これが二一㌫、次に脳卒中が多くて二四㌫ほど。四分の一が脳卒中です。つまり、健康寿命を延していくためには、このような背景を意識して健康づくりに取り組まなければなりません。 要介護の必要度のことを言いましたが、私たちはどのように死んでいくのでしょうか。戦後の死因の推移をみていくと一番はがんです。次が心臓病。脳卒中はずっと減って今は横ばい。その内訳をみると脳出血は減っていますが、脳梗塞はあまり減っていません。また戦後、抗生物質の普及により一度は減少した肺炎が、近年、じわじわと増えています。これは、日本の高齢化と関係しています。年を取ると人は嚥えんげ下、モノの飲み込みがうまくいかなくなります。すると、だ液とか食べたものが気管に入ってしまい、いわゆる誤ごえん嚥性せい肺炎という肺炎を起こします。この肺炎は何度も繰り返しますし、最終的には死につながります。現在は、脳梗塞と肺炎がほぼ同じくらいの死因を占めています。 日本人の一年間の死亡者数は現在約一二〇万人ですが、今後さらに増加し二〇四四年がピークと予想され、死亡者数は一六六万人と予測されています。このようなことを頭に置いて、話に入っていこうと思います。 地球が誕生したのは四六億年くらい前とされていますが、その時、海、海水も既にありました。そこから生命は誕生しました。いわば、私たちの細胞は海水に細胞が浮いているような感じだと考えてください。現在の海水の塩分濃度は三・五㌫。ところが、地球が生まれた頃、海水の塩分濃度は〇・九㌫でした。一㍑の水に九㌘の食塩が溶けているような感じの濃さです。そして、私たちの血液の塩分濃度は今でも〇・九㌫なのです。〇・九㌫の塩分濃度の海水に、私たちの細胞は浮いているということです。塩分濃度が薄くなり過ぎると生命は維持できません。私たちの体の中で、塩分をつくることはできないのです。ですから、最小限の塩分は体外から補充する必要があります。 以上のことを踏まえて、「塩分と健康」「塩分と私」「塩分と私たち」という三つの順番でお話していきましょう。 ではまず「塩分と健康」について。「塩分」と言われて思いつくことは何ですか? 病気なら熱中症、脳卒中……または摂取の仕方、そんな感

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